経緯
布団日よりの秋に、鼻歌まじりに取り込みなどしていると、いきなり隣のベランダの扉がガラガラと開けられた。お化けより恐ろしい人間さまの登場に、慌てふためいたわたしは、
「助けてくれえ」
と、叫びそうな悲鳴をどうにか押さえながら、今は逃げるしかないと、持っていた掛け布団を、部屋のなかへと引き込んだが運の尽き、
窓枠のサイドにある、観葉植物とモデムの棚に引っかかり、どんがらがっしゃり響き渡ったその恐怖に、たましいを震わせていると、さっそく、ハイドロカルチャーやらチランジアやら、割れまくったガラス片やらが、あたりいち面に飛び散ったのであった。
「あなたはよっぽど臆病な方ですね」
そんなみね子の言葉が、隣のベランダから、高らかな笑いと共に宣言されたことは言うまでもない。ただでさえ近頃、パソコンの損傷にこころを痛めていたわたしは、あらゆるものが壊れゆく恐怖のうちに、彼女の屈辱に打ち震えたのであった。しっぽを巻いた三四郎。しかし、身の回りの崩壊の儀式は、まだ始まったばかりであったのだ。
なんのこっちゃ
なんだか、チランジアとウサギが一緒に散らばっているね。
これが元になって、もともと不良品で、安定感の無かった棚に別れを告げ、しっかりとしたスチール棚を、ホームセンターで購入することとなった。不幸中の幸いか、植物のうちに、損傷したものはなかったようで、しかも一番大きくて、一番薄くて、一番壊れやすいガラスの容器は、なんでか割れずに残されていた。
しかしこの後、プリンターが壊れ、NASが壊れ、生活も壊れ果てるとは、いったい誰が予測し得たであろうか。
(写真はすでに新しいNASに交換した後の姿)