大和物語へのオマージュ「ついにゆく道」
大和物語の144段と165段の和歌と、自作の曲をもとに、現代語の歌詞を付けたものです。「つひにゆく」の和歌の部分は、はじめ現代語にしたものの、結局もと歌の意味を込めきれず、同時に何度も唱えれば今日でも、十分意味は伝わるものですから、在原業平の和歌をそのままに利用することにしました。つまりは、言葉の時代変化すら乗り越えて、詩として完成されているということなのでしょう。
問題はむしろ歌唱力の方にあるかも知れませんが、もし頑張って練習したとしても、本質的にはこれ以上うまくは歌えなそうもないので、とりあえずこれで完成として、次の曲へと向かいましょう。秋が過ぎれば冬が来るのは、目に見えていますから。
「ついにゆく道」
原作 在原業平、在原滋春
作詞作曲 時乃志憐
去りゆく雲は 赤くちぎれて
鳥の歌も はるか遠くへ
色を忘れた 山辺のかなたには
かすかなあの日の あそびの歌声さえも
聞こえないほど 遠くになずむたそがれに
明日を待つ 夢さえ絶えて
秋の夜の 身のわびしさに 今思い乱れて
くすぶるいのりも 届かない秋の夜
つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど
昨日今日とは 思はざりしを
[ついに行くことになる
道だとは兼ねてから聞いていたけれど
昨日今日であるとは 思わなかったものを]
明日をかき消す 夕べの風が
三日月の 消えたかなたから
震える指さきに 冷たく触れた
悲しい 勾玉みたいな なぐさめをして
今去りゆく者を やさしくなだめる
明日を待つ 夢さえ絶えて
秋の夜の 今旅立ちの時
夢のおわり日
[「勾玉みたいななぐさめ」あるいは「勾玉みたいなあきらめ」にすべきか]
大和物語のもと歌
楽曲の全体の構図はこちらの144段のものを使用。
けれども、そもそもメインテーマ?「ついひにゆく道」はこちらから持ち込まれたもの。