「夕ぐれ街は秋の夢」(自作曲)

大和物語へのオマージュ「夕ぐれ街は秋の夢」

『大和物語』の108段を作ったときに、古典チックな現代語の曲に出来ないかと試みたもの。別にもとの和歌に寄り添うというものでもなく、精神的なシンパシーに過ぎないくらい。

夕ぐれ街は秋の夢

    作詞作曲 時乃志憐

[Ⅰ]
夕ぐれ街は秋の夢 いそぎあし
私はひとり 誰を待ち人
おもかげ色にまたゝいて 信号機
遮断機落として 止める足なみ

振り向く人は いつの世の
おもかげまとう セピア色に
褪せたコート

腕を伸ばす指先は 蜃気楼
つかみ取れない まぼろしに
歩ゆむ人なみ

[Ⅱ]
たそがれ街は華やかさ いつの唄
さゝやき残して かえる待ち人
ゆきかう人の靴色は 辻(つじ)うらの
数えるふりして だれを待つ虫

かすかな声は いつの世の
おさな名つゝむ やさしい夢
風のかなた

見あげる空の三日月は 蜃気楼
街の谷間の まぼろしに
消える人なみ

大和物語108段

 もとになった「大和物語108段」。現代語の歌詞は、別に和歌の意図に寄り添ったものではなく、むしろ大和物語全体の空気感に寄り添ったものには過ぎません。けれども、その空気感こそが、大和物語の魅力なのかも知れませんから。