大和物語へのオマージュ「東風(こちかぜ)」
『大和物語』の和歌は、(口に出して唱えてみないと、取るに足らないように思えるばかりで、)実際に口に出して唱えてみないと、それがどれほど取るに足るものであるのか、分らないようなひたむきな、優れた和歌ばかりがひしめいて、112段のショートストーリーも、実際に曲にして歌ってみるまでは、これほど思いの込められた、それでいてむしろ和歌の本意というものは、こちらにこそあるのではないかと思われるような、ひたむきな詩情を全うしているとは、思いもしなかったくらいで……
その和歌の思いだけをパラフレーズして、今日の言葉で別の思いに委ねてみたような落書には過ぎません。そうして今は、また次の落書きへと移りゆくばかり。暗記して歌えるようになるほど、練習などしている暇はありませんから。
「東風(こちかぜ)」
作詞作曲 時乃志憐
[Ⅰ]
窓をうつ雨は 朝から わたしの心を
かき乱すように 降りつのる 涙みたいだ
君は君の夢を 追いかける 明日は晴だよと
輝いたそのひとみに わたしは写らない
東風は 今日朝から 吹き続けても
夕ぐれには きっと きっと晴れたなら
急ぎ足する 君の腕を 握りしめて
勇気を出して 言える きっと言えるから
[Ⅱ]
つきまとう雨は 昼過ぎて わたしの願いさえ
押し流すように 降りつのる 瀬を速みして
私には私の夢がある 明日よりも 今なのと
祈りするそのひとみに なみだは似合わない
雨上がり いつもの道で わたしを見つけ
そっけなく 手を振る君は わたしのあだ名
いつもとは 違う言葉で あいさつしたり
立ち止まって あなたの 名を呼んでみたりする
大和物語112段
こちらはもとになった「大和物語112段」のyoutube版