をちこちの
たづきも知らぬ 山なかに
おぼつかなくも よぶこ鳥かな
よみ人知らず 古今和歌集29
あちらこちらの見当もつかない山の中で、
頼りなさそうな声で よぶこ鳥が鳴いているよ
春の部に納められたこの「呼子鳥」の正体がなんなのか、あるいは特定の鳥の名称では無いのか。分からないままにいつしか、まぼろしの鳥とされ、中世には『古今伝授(こきんでんじゅ)』の免許皆伝の、秘術のようにさえ扱われてきた「よぶこ鳥」。それを掲げるカクテルもまた、オリジナルのレシピがなんであるか、今となってはもはや誰にも分からない……
従って、古文書を紐解き、数多くの文献に埋没し、ついに辿り着いたわたくしのこのレシピも、あるいはくつがえされる日が、来るのかも知れませんが……
今はこのシンプルな答案こそ、「よぶこ鳥」の正体であると信じて、わたしはこれを掲載するばかりなのでした。「よぶこ鳥」など飲みながら……
①
ラム酒(ホワイト)を50ml、グラスにそそぐ。
②
麦茶を150mlグラスにそそぐ。
③
軽くステアして、氷を加えて完成。
ウーロン茶、紅茶では、それほどの魅力は感じられない。なぜか、麦茶だけが、ラム酒と溶け合うような不思議な郷愁が、遠くから子を呼ぶ鳥の鳴き声のように、さわやかなさみしさみたいに響いてくるのでした。
2014/09/05(金)