よぶこ鳥 ―麦茶とラム酒の割りもの

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よぶこ鳥 ―麦茶とラム酒の割りもの

をちこちの
   たづきも知らぬ 山なかに
  おぼつかなくも よぶこ鳥かな
        よみ人知らず 古今和歌集29

 あちらこちらの見当もつかない山の中で、
   頼りなさそうな声で よぶこ鳥が鳴いているよ

 春の部に納められたこの「呼子鳥」の正体がなんなのか、あるいは特定の鳥の名称では無いのか。分からないままにいつしか、まぼろしの鳥とされ、中世には『古今伝授(こきんでんじゅ)』の免許皆伝の、秘術のようにさえ扱われてきた「よぶこ鳥」。それを掲げるカクテルもまた、オリジナルのレシピがなんであるか、今となってはもはや誰にも分からない……

 従って、古文書を紐解き、数多くの文献に埋没し、ついに辿り着いたわたくしのこのレシピも、あるいはくつがえされる日が、来るのかも知れませんが……

 今はこのシンプルな答案こそ、「よぶこ鳥」の正体であると信じて、わたしはこれを掲載するばかりなのでした。「よぶこ鳥」など飲みながら……

「よぶこ鳥」のレシピ


 ラム酒(ホワイト)を50ml、グラスにそそぐ。


 麦茶を150mlグラスにそそぐ。


軽くステアして、氷を加えて完成。

 ウーロン茶、紅茶では、それほどの魅力は感じられない。なぜか、麦茶だけが、ラム酒と溶け合うような不思議な郷愁が、遠くから子を呼ぶ鳥の鳴き声のように、さわやかなさみしさみたいに響いてくるのでした。

リンク

千人万首「猿丸大夫」
………藤原公任の『三十六人撰』によると、「よみ人知らず」の「をちこち」の和歌は、猿丸大夫(さるまろのたいふ)の作品であるという。
ウィキペディア「麦茶」
………平安時代より「麦湯」としてたしなまれていた麦茶を、シマンチュのサトウキビによるラム酒で割ったとき、大和のカクテルとしての「よぶこ鳥」は完成するとも言われている。

2014/09/05(金)

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