うごく葉も
なくておそろし
夏木立
カフェテラスにカフェの焼酎割りをたしなんでいた与謝蕪村(1716-1784)が、風の途絶えた木々の青葉に読んだ句が、いつしか大和風カクテールの名称になりました。そんなまぼろしも浮かぶような、アイスコーヒーの麦焼酎割です。(それにしても風すら吹かない夏木立の、灼熱の暑さと影の涼しさのカクテールを、「おそろし気である」と感じた彼の感受性には、オスミンならずともおどろくばかりですね)
ホットドリンクと異なり、ウイスキー、ラムなどを加えると、嫌みが生じること。殺風景なウォッカよりも、甘みの勝る麦焼酎こそが、もっともコーヒーに合うこと。けれどもミルクは、アルコールとコーヒーの相性を、おだやかなぬくもりで包んでくれること。それらを総括して、きわめて単純な、夏のカクテールへと至らしめたものが、この「夏木立」には他なりません。
試して悪しきもの、取るに足らないもの
ウォッカ、ジン、ウィスキー、ブランデー、ラム、ミリン(そこまで試すきみの情熱にはあきれるものの、ミリンの甘さよりは、普通に砂糖を入れた方がおいしかったです)
ハチミツは、砂糖の代わりに入れても悪くありませんでした。
①
アイスコーヒーを自分で作ればおいしいが、面倒なら市販のものをそのまま使用する。わたしはノンシュガーだが、砂糖を加えたい人は、あらかじめ砂糖を加えたアイスコーヒーを購入しても構わない。
②
ノンシュガーであればこそ、ほのかな甘み、風味、コーヒーとの相性には、ウォッカではなく、甲類焼酎でもなく、麦焼酎こそが相応しい。さらに牛乳を用意して……
③
[コーヒー:牛乳]
の比率が、
[2:1]
さらに、
[コーヒー牛乳:麦焼酎]
の比率が、
[2:1]
になるように混ぜ合わせるだけである。たとえば一例として、
無糖アイスコーヒー 120ml
牛乳 60ml
麦焼酎 90ml
といった量になる。
ちなみに、
[コーヒー:牛乳:麦焼酎]の割合が、
[2:1:1]
のものよりも、上のレシピの方が、焼酎の甘さが生きてくるので、おすすめ。
④
あとはお好みで氷を加えてもよいし、加えなくてもよいが、シナモンスティックを一本添えて、これをもって夏木立と見立てるこそ、風流の極みであると、あの日の与謝蕪村は、マイブックにそっと記していたこと……それだけを今のわたしは、歴史に記しておこうと思うよ。
2014/03/26(水)