「かえしは蕎麦のためにあるんじゃない、
万能調味料のためにあるんだ」
そう叫んで死んでいった仲間たちの亡霊が、今甦る。(……病気だなこりゃ)
しょうゆ・砂糖・味醂(みりん)を配合した「煮返ししょうゆ」から、やがては「かえし」と呼ばれ、さまざまな用途に使用できるため、万能調味料とも讃えられる「かえし」。こいつをストックしておくだけで、日々の料理が驚くほど救われるという「倍返し伝説」も残されている。
しょうゆを加熱するのは、しょうゆ独特の香り成分の癖を取り除いて、角をなくすことによって、しょうゆが後ろに控える黒子のように、主張しない調味料として活躍できるようにするためだとか。(蕎麦つゆのダシを取る際に、かつお節を厚削りで長時間煮出すのも、かつおの風味を控えさせて、味わいだけを取り出すための処置とか。)
醤油を加熱するものを「本かえし」、醤油が非加熱のものを「生がえし」と言う。作り方も、配合もさまざまで、それがそば屋の個性を演出してる訳だが、あまりシビアに考えると、素人の領域を抜けちまう。そんな「こだわりきれない人のための」、あるいはそれは私のことかもしれないが、かえしの作り方を紹介しよう。
・取りあえず、出来ればよい醤油(濃口醤油)、ほんまもんのミリン(ミリン風調味料不可)、砂糖を用意して、下のお好みの比率でまず試してみよう。砂糖はお馴染みの白砂糖(上白糖)以外にも、白ザラメを使うと上品になるとか、「かないまる」さんおすすめの中ザラメを使用するとかすると、また味わいが変わるようだ。
[NHK趣味悠々比率]
醤油 1000cc : ミリン 180cc : 砂糖 180g
[醤油1斗:ミリン2升:砂糖3kgの比率]
醤油 1000cc : ミリン 200cc : 砂糖 170g
[単純比率にもとずく]
醤油 1000cc : ミリン 200cc : 砂糖 200g
①
鍋にミリンと砂糖を加えて、中弱火くらいで加熱。細かな泡が立ってきたら弱火にして、沸騰しないようにしながら、砂糖を溶かしつつ、アルコールを飛ばす。
②
砂糖が透明になったら、しょう油をゆっくり注ぎ、火力を中弱火くらいにして、のんびり加熱。湯気が立って、薄い泡が表面に薄く出てきたら、様子をうかがって、沸騰の泡が出てくる直前くらいに火を止める。
③
そのまま、蓋をした鍋に覚めるまで置いて、たとえば翌朝、瓶(ペットボトルでもよい)などに移し替えて保管する。最低一週間くらい寝かせると、味が落ち着くようだが、作ったその日に使用し始めても、差し支えはない。ゆとりがあれば、二、三日は待ってみたい。
容器は、煮沸(しゃふつ・しょふつ)した酒瓶や、綺麗に洗ったペットボトルなどが良いようだ。保管場所は、冷暗場が良いというが、現代の住宅事情では、冷蔵庫に入れてしまった方が、良いかも知れない。
これは、蕎麦打ちを追求なさっている「かないまる」さんの努力の結晶を、まるで台無しにええ加減に解釈した駄目な作り方の説明です。
本当は、本枯れ節とか混合節とかの厚削り節を、長時間煮込んで出汁を取るのが、そば屋の蕎麦つゆだそうである。しかし家庭にストックされべき、鰹の薄削り節で無ければ、とても仕事帰りのばてた体じゃあ作れっこない。なあに、鰹の薄削り節でもそれなりにおいしい蕎麦つゆは出来るから、なんくるないさ。
[だし汁の材料]
水300cc(ミネラル分の少ない軟水)に対して、かつお節10g(蕎麦つゆはかつお節の味が主張するくらいの出汁が美味しい)。
[注意]
・以前の粉の緑茶を抹消。
蕎麦つゆは、他のものを加えたり、
お茶で作ったりしても、良い効果はないようだ。
[だし汁の作り方]
水を沸騰させたら、かつお節を投入して、火を止める。かつお節を菜箸でお湯にくゆらせながら、2、3分たったら、ふきんやキッチンペーパーで漉す。残ったかつお節は、菜箸で軽く抑える程度で、あまり絞らない方がよいらしい。(薄削り節は、十分に味が出ているので、無理して使用せず、捨ててしまってよいし、つくだになどにしてもよい)
[蕎麦つゆを作る]
[かえし1:だし汁3.5]
の比率で鍋に入れて、中火より弱いくらいで加熱する。気泡が見えてきたらさらに火を弱めつつ、沸騰ちょい前、表面の「ゆらゆれ」あたりで火を止める。ある程度冷ましてから、冷蔵庫へ入れて冷やす。
[寝かせる]
すぐに使ってもよいが、一晩寝かせてから、翌日使用する方が美味しくなるのは、味がなじむためらしい。しかし、かつおの出汁が入っているので、何日も置くと、今度は風味が抜けて、乏しい味になってしまう。一日、二日後くらいに使用。
混合節を使ってみたらいかがか? まだリサーチ中。温の場合は、昆布も使用する。 椎茸とその出汁は、量を注意しないと、蕎麦つゆを台無しにすることもある。
温つゆの場合は、かえし1に対して、出汁が8くらいになる。
「美味しんぼ」で紹介さていた「並木藪蕎麦」のかえしの作り方。
①
しょう油を冷暗な土に埋められた瓶(かめ)に入れる
②
お湯に砂糖を溶かして、溶けきったら瓶のなかのしょう油に入れ、木蓋をして三週間寝かせる。これをもって「かえし」となす。
③
三週間経ったら、いよいよダシを取る。薄削り節ではなく、かなりの厚削りのかつお節(本節)を、約90分くらい、「七升の水が三升になるまで」ぐつぐつするような火力で煮詰める。
④
このダシに、三週間寝かせた「かえし」を入れて、さらに味醂(みん)を加え、煮立たないくらいの温度で加熱する。これを土湯婆(どたんぽ)(土器のうつわ)に入れて、そのまま蓋をしないで、24時間置く。
⑤
その後、土湯婆のまま、45分くらい湯煎に掛け、さらに土湯婆のまま、上に藤のザルで蓋をして、24時間置くと完成。
[おまけ]
そこの、かつての主人(堀田平七郎)の書籍をもとに、
ネット上に紹介されていたものは
「1リットルの湯で鰹の厚削り節56gを90分煮詰めて3/7にし、430ccのだし汁を作る。また別に、ヤマサの本醸造しょうゆ360ccに砂糖47gを溶かして一週間冷蔵庫に保存したもの(かえし)を用意しておく。だし・かえし・みりん(72cc。銘柄は不明)を合わせ、80度に加熱し約8%煮詰める。この工程では素焼きのタンポを使いたい。タンポにザルをかぶせ、一日放置して完成。」
結論を述べるなら、家庭で作る場合、「かえし」自体は、味醂を煮きり、砂糖を溶かしたものに、しょう油を加え、沸騰しないくらいに加熱して、そのまま1,2週間、冷蔵庫に寝かせたものを使用すれば、十分であるように思われる。さらにだし汁に、かえしを加えて、翌日に使用するという方針でよいが、問題は「ダシ」を、薄削り節で短時間の加熱で澄ませるか、厚削り節を購入して、長時間煮出すかというあたりにあるようだ。もちろん、しょう油、砂糖、味醂の味わいは、根本的な問題ではあるのだけれど……
そんなに、本格派を気取らなくても、
おいしく出来るから、試してみたらよいでしょう。
自己確認したものではなく、ネットを徘徊して有用そうなものをピックアップしただけのもの。
[単純比率]
醤油 1リットル: ミリン 100cc: 日本酒 100cc: 砂糖 200g
2009/06/21
2013/10/30 蕎麦つゆちと改訂